日本における東洋医学は、古代中国で発生した中国伝統医学を指します。
一方、広い意味でいえば、アジア圏(東洋)で発生した伝統医学の総称でもあります。
中国、朝鮮半島から伝わった日本でも独自の東洋医学が発展していきました。

アジア発祥の医学の総称「東洋医学」

日本で用いられる東洋医学という言葉は、中国でおこった銭灸や漢方薬などによる治療(中国伝統医学)を指すのが一般的です。
しかし、広い意味では、トルコ以東のアジア圏における伝統的医学全般を指し、インドのアーユルウェーダ、イスラム圏のユナニー医学、チベット医学、中国伝統医学などを含んでいます。
ただし、本書においては日本でいう東洋医学の意味に合わせ、中国伝統医学=東洋医学として扱います。
古代中国で発祥した中国伝統医学は、日本を含む東アジア各地に伝来し、日本においては、漢方医学(または和漢方)、韓国においては韓医学はたは(東医学)として発展してきました。
200O年以上の長い歴史と経験に基づいている中国伝統医学は、世界にいくつもある伝統医学のなかでも、最も理論的な体系を整えているとされます。
さらに治療目的の医学として、漢方薬や鍼灸(しんきゅう)治療、按摩(あんま)や気功(太極拳)など、さまざまな治療方法を備えている点は、伝統医学のなかでも類を見ない特徴とされます。

アジア各地東洋医学

中国伝統医学とはどんな医学なの?

中国伝統医学は、陰陽(いんよう)、五行(ごぎょう)、天人合一(てんじんごういつ)といった古代の自然哲学を、中国各地に自然発生的におこった医療技術と結びつけて確立させたものです。
これらの医療技術は、東、西、南、北、中部のそれぞれの地域の自然環境と食生活を反映する形で、独目の発達を遂げていきました。

東方では、石器で身体を押す砥石(へんせき)療法が生まれ、乳製品や肉を多く食べる西部では内臓疾患が多いために薬草(漢方薬)療法が発達しました。
多湿で発酵食品を食す南方では、痙攣(けいれん)や麻痺(まひ)の治療として鍼(はり)療法が発達しました。
寒冷地の北方では身体を温める灸(きゅう)療法が、食物が豊富な中部では労働が少ないために、運動を伴う導引(どういん)や按摩(あんま)が発達したとされます。

中医学・医療技術

鍼灸は戦国~後漢時代に編纂されたか「黄帝内経」にもすでに記述があります。
漢方薬は秦・漢時代の「神農本草経」こ365種の生薬が紹介されています。
どちらも2000年以上の歴史をもつ治療法です。

日本における東洋医学の発達

日本に、中国伝統医学が伝来したのは5世紀のなかばごろです。
朝鮮半島を経由し、あるいは遣晴使や遣唐使により中国からもたらされたといわれています。
飛鳥時代の701年に制定された「大宝律令」で、医官制度を定めた「医疾令」を発布しました。
医師のはか、鐵灸師や按摩師も医官職として記されており、その時点ですでに中国伝統医学が日本に定着していたことをうかがわせます。
平安時代には、日本最古の医学書『医心方1も完成しています。
最も発達を遂げたのは江月時代です。
後世派、古方派など、さまざまな解釈が生まれ加速度的に発展し全盛期を迎えます。

しかい明治時代以降は西洋医学が正式医学として採用され、東洋医学は衰退していきます。

昭和以降は、手軽に服用できる漢方薬(エキス剤など)が開発され、再び東洋医学が脚光を浴びるようになりました。
副作用が少ないこと、不定愁訴にも対応できることなどが知られ、2001年には医学教育のコアカリキュラムに導入されました。
西洋と東洋の双方の特徴を生かし、横断的、総合的な治療が進められています。

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