
飲んですぐ効く頓服漢方
漢方薬は長く飲むもの、慢性的な病気のためのもの……。
そんなふうに思ってはいませんか? 実は1回飲んだら、すぐに効く漢方薬もあるんです。
症状をとる漢方なら飲んで数分で効くことも
漢方薬は慢性病や体質改善に効く薬だから、長く飲まないといけない。
こんなイメージがある一方、「風邪に葛根湯」といわれるように、即効性のある漢方薬も知られています。
この違いはなんなのでしょうか。
これについては、「そもそも漢方には『体質治療』と『症状治療』という二つの側面があるからだ」と言います。
「「体質治療』とは、体に備わっている免疫力や、体の状態を一定に保と.フとする機能〔ホメオスターシス)の低下を改善させる治療で、漢方が得意な分野です。
風邪を引きやすい、疲れやすいというような虚弱体質や、アレルギー疾患、自律神経失調症のような慢性疾患を改善させるには時間がかかるため、漢方薬を長く飲んでいただきます。
一方、「症状治療』はその人の症状をク気・血・水4や、虚証4、実証苧といった漢方の独特の考え方でとらえて治すもので、比較的、既効性があります。
風邪に葛根湯、こむら返りに芍薬甘草湯というように、数分以内に症状がとれるもの、2、3日の服用でとれるものなどがあります」ちなみに、西洋医学も基本的に症状治療ですが、この場合は表面化した症状を抑え込むため、漢方とは考え方が違います。
「もともと漢方薬はセルフメディケーションとして利用されていました。
起こりやすい症状に合った漢方薬を用意Lておき、『あっ、きたな』と思ったら、一服する。
これが漢方薬の上手な使い方です」
漢方薬は病院で処方してもらうほか、薬局で一般用医薬品(OTC薬)とLて購入することもできます。
「病院なら『漢方外来』『東洋医学外来』のような専門外来や総合内科、婦人科などで処方してもらえます。
薬局で購入する場合は漢方薬に詳しい薬剤師とじっくり相談してから買い求めてください。
自己判断で買うのはおすすめできません。
いずれにしても、西洋医学的な検査もしておくことが大切です」。
1.胃腸症状
1.1 腹部膨満感

●大建中湯 >
腸にガスがたまっておなかがパンパンに張った状態が腹部膨満感。
冷え症の人や高齢者に多い症状ですが、最近は若い人にもストレスによる腹部膨満感が増えています。
おなかがぼっこりとふくれ、不快感がともないます。
ウエストがきつくなって洋服が入らなくなることも。
こうした腹部膨満感によいのが●大建中湯 >です。
おなかを温めて腸の動きを改善させる作用があります。
飲むと少しずつガスが出るようになって、スッキリ。
一服でも効きますが、がんこな症状なら1日3包を2~3日続けて飲みましょう。
腹部膨満感は便秘をともなう場合もありますが、●大建中湯 >はそんな便秘にも効果があります。
ただし下痢が必要なこともあるので、医師に相談後服用を。
1.2 胃痛
●安中散 >
胃痛や消化不良、胸やけなどがあっても、検査で原因が見つからない場合があります。
これは「機脂性胃腸症(FD)」と呼ばれる病態ですが、その症状緩和に有効な漢方薬の一つが●安中散 >です。
「おなかを安らかにする」薬として使われてきたこの漢方薬は、胃腸の粘膜を守ったり、胃の消化機能を高めたりする作用などで胃腸の働きを助けます。
飲むと胃がスーッとして、痛みが楽になります。
神経性の胃痛にもよいですが、潰瘍があるときは使用を避けてください。
1.3 胃もたれ
●六君子湯 >
食べすぎ、飲みすぎが続くと起こるのが胃もたれ。
胃の働きがにぶくなり、消化不良を起こして食べものが胃に残ってしまうことが原因です。
暴飲暴食をしたあとだけではなく、もともと食が細い人や胃腸カ搦い人にも起こりやすい症状の一つです。
●六君子湯 >は、胃腸を丈夫にする●四君子湯>と、胃の中の水分停滞(胃内停水)を治す●二陳湯>を合わせた処方。
胃もたれのほかにも、食欲が出ないときや胃下垂の切合にも用いられている漢方薬です。
1.4 下痢
●真武湯 >
下痢には、細菌によって起きる「感染性の下痢」と胃腸虚弱によって起きる「体費性の下痢」とがあります。
このうち体質性の下痢は、食べすぎたり辛いものや、消化の悪いものを食べたりすると表れるのが特徴で、冷え症の人に多い症状です。
この緩和に効果を発揮するのが●真武湯 >です。
会議などの重要な場でもよおしそうな予悠があるときに飲んでおくと、胃腸の余分な水分を出し、蜘勧運動を調整してくれます。
会議の3時間ほど前までに飲むと安心です。
1.5 お腹ゴロゴロ
●半夏瀉心湯 >
静かなときにかぎっておなかがゴロゴロ……。
恥ずかしい思いをしたことがある人も多いのではないでしょうか。
こうしたおなかのゴロゴロを漢方では「腹中雷鳴」といって、症状の一つとしてとらえています。
おなかが鴨るのは、水分と食べものが急に動くため。
とくに、緊張時になると骨面が動きやすくなるので、大事なときに限って音がしてしまうわけなのです。
こうしたゴロゴロは精神的な面が関係しているため、西洋薬の整腸剤では治しにくいものです。
漢方なら、みぞおちのつかえをとる●半夏瀉心湯 >がストレスによる胃腸症状を和らげておなかを鳴りにくくしてくれます。
鳴りそうだなと思ったときに、早めに飲むのがおすすめです。
2.精神症状
2.1 のどのつかえ

●半夏厚朴湯 >
ものが詰まっているわけでもないのに、のどがっかえて苦しい、のどに何かがたまっている感じがする。
さらに緊張すると過呼吸になったり、動悸がしたりすることも……。
こうした「咽喉頭異常感症」は女性がよく訴えるもので、ストレスに起因することが多いといわれています。
これを西洋では「ヒステリ球」と呼びますが、漢方では「梅核気」といい、ものが詰まっているわけでもないのに、のどがっかえて苦しい、のどに何かがたまっている感じがする。
さらに緊張すると過呼吸になったり、動悸がしたりすることも……。
こうした「咽喉頭異常感症」は女性がよく訴えるもので、ストレスに起因することが多いといわれています。
これを西洋では「ヒステリ球」と呼びますが、漢方では「梅核気」といい、●半夏厚朴湯 >がよく処方されています。
飲むとのどのつかえがとれて、苦しさが和らぎます。
l半夏厚朴湯がよく処方されています。
飲むとのどのつかえがとれて、苦しさが和らぎます。
2.2 イライラ
抑肝散
イライラして感情をコントロールできない人におすすめなのが抑肝散です。
「肝」は「疳の高ぶり」の疳と同じ意味で、抑肝散は疳を抑える薬として、古くから用いられてきました。
怒りやすい、待てない(我慢できない)、眠れないという三つの要素がどれか一つでも当てはまるという人は、抑肝散を飲んでみてはいかがでしょう。
飲むと異言や緊張がスーツととれて、気持ちが落ちつきます。
ちなみに、抑肝散は赤ちゃんの夜泣きがあるときに、母親と子供に一緒に飲ませて親子の興奮をともに静める「母子同服」がとられる薬としても知られています。
イライラがずっと続いて体力を消耗した人は、抑肝散に陳皮と半夏が加わった抑肝散加陳皮半夏を使用しましょう。
2.3 強い不安感
半夏厚朴湯
動作を始める前に決めごとをしないと気がすまない、気になって何度も手を洗ったり、戸締まりを確認したりする……。
そうした不安感が強くてどうしょうもないときに、半夏厚朴湯という漢方薬を飲むと不安が解消されることがあります。
これはふさがっだ無を開く「気剤」の一つで、漢方の抗不安薬として使われています。
香り成分で気分を安定させる紫蘇葉に、気のつかえをとる厚朴や生姜など、生薬の相乗効果で症状が治まります。
2.4 軽いうつ
香蘇散
最近、問題になっている症状の一つが「うつ」です。
西洋薬の抗うつ薬を使って治していくのがr般的ですが、昼間にだるくなる、眠くなる、逆に夜眠れなくなるといったいわゆる「薬が合わない」場合も少なくありません。
そこまで病気が進んでおらず、なんとなく気分がふさぐ、憂うつになっているという状鰻であれば、香蘇散という漢方薬で十r分対応できるので試してみましょう。
香蘇散は虚弱体費の人が風邪の引き始めに飲む薬で、だるくて微熱が続く、元気が出ない、おなかの具合が悪いといったときに処方されます。
「こころの風邪」といわれる軽症のうつにも、こうした風邪の症状と似ていることから使われます。
早ければ1日、2日で元気になるでしょう。
2.5 あがり性
柴胡加竜骨牡蛎湯
人前で発表したりテストを受けたりする前などに、緊張して手足カ喰えたり、カーッとなったりすることがあります。
いわゆる「あがり」という状態で、これがいつもあると大事なときにミスをするなど、何も考えられなくなってしまうものです。
こんなとき、事前に柴胡加竜骨牡蛎湯を飲んでおくと、過度な興奮や緊張が治まって大事な場面でもあがらずに臨めるようになります。
あがり性を自主する人は、この薬を常に携帯しておくのがおすすめです。
3.その他症状

3.1 こむら返り
芍薬甘草湯
こむら返りとは、ふくらはぎや足の裏、太ももの筋肉などが突然けいれんして痛みが出る、いわゆる「足がつった」状態のことです。
疲れがたまっていたり、日中、長い間立っていたりしたことが原因で、寝ているときや運動しているときに起こることが多く、妊娠中や甲状腺の病気、腎臓病、肝臓病などが原因で起こることもあります。
芍薬甘草湯は生薬の芍薬と甘草が1対1で入っている漢方薬で、これまでの研究から、筋肉の緊張をゆるめて、けいれんや痛みなどの症状を抑える作用があることがわかっています。
こむら返りが起こったときに1剤服用すると、たちまち症状が改善されます。
とくにこむら返りが起きやすい人は、枕もとに常時用意しておくのもいいでしょう。
3.2 ぎっくり腰
芍薬甘草湯
西洋では「魔女の一撃」ともいわれるほど痛いぎっくり腰(急性腰痛症)。
ある動作をしたことで、脊椎のまわりの筋肉や靭帯などに損傷が起こることが原因です。
ぎっくり腰になったら安静が第一ですが、同時に骨格筋の急激な炎症をとる漢方薬、芍薬甘草湯を一服しましょう。
漢方では昔からこの薬を「去杖湯(飲むと杖なしで歩けるようになる薬)」と呼んで重宝してきました。
ぎっくり腰になりやすい人は、常備しておくのもいいでしょう。
3.3 体力の低下
補中益気温・小建中湯
身体がだるく、動くのがつらい、すぐに疲れるというときにおすすめなのが、補中益気湯と小建中湯の2剤です。
いずれも胃腸の働きを整えて消化吸収力を高め、エネルギーが効率よく体を巡るようにしてくれます。
10代の若い人には小建中湯、50代以降の人には補中益気湯、あとは状況に応じてどちらかを服用します。
ただし、ドリンク剤のように薬そのものがエネルギー源になっているわけではないので、食事から栄養をしっかりとることが前提です。
3.4 冷えによる月経痛
当帰四逆加呉茱萸生姜湯
月経痛のなかには子宮筋腫や子宮内膜症のように何かしら痛みの原因があって生じるものと、そうした問題がないのに痛みが生じるものがあり、漢方薬は後者の「機能性月経困難症」によく用いられています。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、冷えが強い人の漢方薬です。
おなかが令えてキューッと差し込むような月経痛(疝気)が起こったときに有効です。
飲むとすぐに身体が温まるほど即効性があり、その効果は、30秒程度で痛みがとれる場合があるほどです。
3.5 膀胱炎
清心蓮子飲
漢方が有効なのは、膀胱炎のなかでも細菌などの原因がない「無菌性膀胱炎」です。
膀胱や尿道の血流が悪くなるために粘膜が知覚過敏になっている状態で、ストレスや冷えが引き金になりやすいのです。
症状は、残尿感や排尿時の痛みです。
年飴を問わず女性がなりやすい病気ですが、病院で検査をしても原因が見つからないため、「問題ない」「大丈夫」ですまされてしまいがちです。
症状があるのに、我慢している人も多いようです。
漢方では、痛みや残尿感は身体の水(水分代謝)のバランスが崩れるために生じると考えられています。
清心蓮子飲にはこの水を調整して身体を温めつつ、不必要な熱(ほてりなど)をとる働きがあり、服用すると次のトイレから症状が楽になります。