
日本における東洋医学は、古代中国で発生した中国伝統医学を指します。
一方、広い意味でいえば、アジア圏(東洋)で発生した伝統医学の総称でもあります。
中国、朝鮮半島から伝わった日本でも独自の東洋医学が発展していきました。
東洋医学では、西洋医学とは違う診断を行います。
その診断の元となるのが望診・聞診・問診・切診です。
身体の状態を総合的に評価する「証」を決め、治療を行います。
アジア発祥の医学の総称「東洋医学」
日本で用いられる東洋医学という言葉は、中国でおこった鍼灸(しんきゅう)や漢方薬などによる治療(中国伝統医学)を指すのが一般的です。
しかし、広い意味では、トルコ以東のアジア圏における伝統的医学全般を指し、インドのアーユルウェーダ、イスラム圏のユナニー医学、チベット医学、中国伝統医学などを含んでいます。
ただし、日本でいう東洋医学の意味に合わせ、中国伝統医学=東洋医学として扱います。
古代中国で発祥した中国伝統医学は、日本を含む東アジア各地に伝来し、日本においては、漢方医学(または和漢方)、韓国においては韓医学はたは(東医学)として発展してきました。
200O年以上の長い歴史と経験に基づいている中国伝統医学は、世界にいくつもある伝統医学のなかでも、最も理論的な体系を整えているとされます。
さらに治療目的の医学として、漢方薬や鍼灸(しんきゅう)治療、按摩(あんま)や気功(太極拳)など、さまざまな治療方法を備えている点は、伝統医学のなかでも類を見ない特徴とされます。

中国伝統医学とはどんな医学なの?
中国伝統医学は、陰陽(いんよう)、五行(ごぎょう)、天人合一(てんじんごういつ)といった古代の自然哲学を、中国各地に自然発生的におこった医療技術と結びつけて確立させたものです。
これらの医療技術は、東、西、南、北、中部のそれぞれの地域の自然環境と食生活を反映する形で、独目の発達を遂げていきました。
東方では、石器で身体を押す砥石(へんせき)療法が生まれ、乳製品や肉を多く食べる西部では内臓疾患が多いために薬草(漢方薬)療法が発達しました。
多湿で発酵食品を食す南方では、痙攣(けいれん)や麻痺(まひ)の治療として鍼(はり)療法が発達しました。
寒冷地の北方では身体を温める灸(きゅう)療法が、食物が豊富な中部では労働が少ないために、運動を伴う導引(どういん)や按摩(あんま)が発達したとされます。

鍼灸は戦国~後漢時代に編纂されたか「黄帝内経」にもすでに記述があります。
漢方薬は秦・漢時代の「神農本草経」こ365種の生薬が紹介されています。
どちらも2000年以上の歴史をもつ治療法です。
日本における東洋医学の発達
日本に、中国伝統医学が伝来したのは5世紀のなかばごろです。
朝鮮半島を経由し、あるいは遣晴使や遣唐使により中国からもたらされたといわれています。
飛鳥時代の701年に制定された「大宝律令」で、医官制度を定めた「医疾令」を発布しました。
医師のほか、鐵灸師や按摩師も医官職として記されており、その時点ですでに中国伝統医学が日本に定着していたことをうかがわせます。
平安時代には、日本最古の医学書『医心方」も完成しています。
最も発達を遂げたのは江月時代です。
後世派、古方派など、さまざまな解釈が生まれ加速度的に発展し全盛期を迎えます。

しかい明治時代以降は西洋医学が正式医学として採用され、東洋医学は衰退していきます。
昭和以降は、手軽に服用できる漢方薬(エキス剤など)が開発され、再び東洋医学が脚光を浴びるようになりました。
副作用が少ないこと、不定愁訴にも対応できることなどが知られ、2001年には医学教育のコアカリキュラムに導入されました。
西洋と東洋の双方の特徴を生かし、横断的、総合的な治療が進められています。

東洋医学とは

お疲れ様です。この「EC Web」をご覧いただき、大変ありがとうございます。
40代から50代は、体の変化が始まり、健康への意識も高まる時期ですね。
ホルモンの減少による更年期は辛いですが、それだけに家族の健康にも敏感で、ケアしてあげたい気持ちも高まる時期でもあります。
身近な年上の方には「辛さを軽減して、いつまでも元気でいてほしい」こんな想いの方も多いでしょう。
昨今、西洋医学の発展は目覚ましく、原因をピンポイントまで見つけ出して、悪い部分を治したり、手術で切り取ったりする技術に優れていることは、ご存知ですね。
一方で、東洋医学はどうでしょうか。「よくわからない」「長く続けないと効果が出ないのでは?」そう考えて敬遠している方も多いですね。
それは、とても勿体無いことですね!。
漢方薬は身体にも精神にも、優しい治療ができますよ。
風邪や腹痛など日常起こりやすい不調も、体質を知っていれば、毎日のちょっとした工夫で体調管理ができます。

徳川家康は漢方を愛用し、ご存知のように長生きして、多くのお子さんを遺したという歴史もあります。
また漢方はネガティブな疾患に対する改善だけではありません。
楊貴妃をはじめ、歴史上の女性たちは、美容や若返りのためにも漢方を利用してきたのです。
「漢方薬」という言葉を聞いて、何を連想するでしょうか?「民間療法」「病院とは違う治療法」「長期間飲む高い薬」。あるいは、「体に優しい」「自然治癒」。
しかし、それらはすべて情報不足による偏った考え方だったのだと、実感しました。
身体の調子は、体力や気力、ストレスなど、さまざまな要因で毎日変わっています。
季節や気候によっても、体質は変化します。バランスをその人に合わせて整えたり、抑えたり、能力を引き出す手助けをしてくれるのが「漢方薬」です。
正しく理解すれば、これほど理にかなった治療方法はないのです。漢方の考え方を知り、自分に適した漢方に出合って、毎日がもっといきいきと楽しくなります。
漢方を知ることは、自分の心と体を見つめなおし、いたわることに通じます。
あなたも自分に合った漢方生活を始めてみませんか?
体内の不足を補い(補)、多すぎを抑える(瀉)
対策として食事ではタンパク質と抗酸化物質を積極的に取り、日中に座ったままでいない、体を動かすことを意識しています。
それでも何となくの不調を感じるとき、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を服用します。
のどが痛いなど明らかに不調があるときは麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)を使用します。
そうすると寝つきが良く、翌日には復活して元気にがんばれます。

コロナ禍で病棟に密着取材する際にも、体調を整えるためにこれらの漢方薬に随分とお世話になりました。
出張先で疲労を感じ、しかも冷房の効いたホテルの部屋で休む際、『このまま寝ると風邪をひきそうだ』というときに補中益気湯を服用します。
ぐっすり眠れて翌朝に良い目覚めなんですよ。
「西洋医学の手法」でも効果が認められた
<東洋医学を西洋医学の手法で分析し、その効果が認められつつあることに言及している>と結ばれています。
今年は6月から暑い日が続き、体調を崩しやすくバテやすいですね!。
今こそ、西洋医学の手法でも効果が認められた漢方薬を使ってみるのもいいのではないかと考えたのです。
「胡散臭い(うさんくさい)」イメージの理由

東洋医学といえば、その人の体調と体質を表すために「表裏」「虚実」「寒熱」「気・血・水」という4つの物差しを使います。
これら4つを合わせて「証(しょう)」という見方がされます。
しかし、証によって処方する形が、漢方薬が非科学的だとか胡散臭い(うさんくさい)といわれてしまう理由でもあると思いますね!。

【ここに本文を記入してください】 東洋医学の診断の際には『その人の証をとる』という言い方をしますよね。
まったく違う病気だけれども同じ治療をする『異病同治』、また一方で、同じ病気だけれどもその人の症状に応じて薬を変える『同病異治』という言葉もあります。
例えばよく知られる葛根湯(かっこんとう)は、風邪の引き始めや肩こりに適応があるとされていますし(異病同治)、AさんとBさんが同じ“風邪のひき始め”であっても、体質に合わせて違う漢方薬を処方する(同病異治)ということです。
その考え方は否定されるものではありませんが、あくまで、西洋医学の視点で東洋医学を捉える試みをしています。
また細胞実験や動物実験の報告も多数紹介していますが、『~に効く』と記した漢方薬についてはすべて、人を対象に臨床試験を行い、有効性が確認できたものを取り上げているのです。
葛根湯葛根湯は臨床試験で市販の総合感冒薬と同等の効果があることが報告されています
「なぜ効くのか」は、西洋医学的な手法で科学的根拠が証明された東洋医学を扱っている、ということです。
コロナ後遺症に効く「補中益気湯」
時々服用している補中益気湯については、同書で下記のように紹介されています。
補中益気湯には、抗疲労作用のあるニンジンや、抗炎症作用を持つソウジュツやサイコなど10種類の生薬が含まれます。
補剤のなかで最も使われていて、体力虚弱で元気がない人の消化機能の衰弱や倦怠感の改善に用いられています。
人を対象にした臨床試験でも、がんの手術後や化学療法中の体力維持・回復などで効果が報告されています。
臨床モデルにおける補中益気湯の免疫制御作用
「補剤」とは、健康な体に必要な「気力」や「体力」「血液」などを補うと考えられる漢方薬のことです。
主なものとして3つ「補中益気湯」「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」が挙げられますね。
新型コロナウイルス感染症に対しても、予防や後遺症症状を緩和するために多く使われました。

広島大学の小川恵子教授らが行った臨床試験では、医療従事者に補中益気湯と葛根湯を継続的に服用してもらったところ、免疫機能の強化や感染率の低下、症状の悪化を防いだことが報告されています。
そして免疫機能に作用するメカニズムへと話は続いていきます。
生薬に含まれるどの成分が薬理成分として働いているのかもわかってきているといいます。
身体内の不足を補い、多すぎを抑える
漢方薬が難しいのは、ひとつの薬にさまざまな生薬が含まれていることです。
しかも生薬は、もともとが葉っぱや動物の臓器だったりして、それ自体が混合物といえます。
ですから“何がどう効くのか”という説明がなかなか難しいのです。

ひとつの漢方薬には、数十~数百種の生薬(成分)が含まれます。
対して西洋薬は、基本的にひとつの成分で作られ、身体内の特定箇所にピンポイントで強く作用するためわかりやすいです。
簡単に言うとアレルギー性鼻炎の薬なら、体内でアレルギー症状を引き起こすヒスタミンが受容体に結合することを防ぐことで、アレルギー症状を止める仕組みです。
対して漢方薬の場合は、本当にさまざまな物質が入っているため、服用する人にいろんな作用をおよぼしてくれます。
服用する人の体質に合わせて働くという側面
腸の免疫を高める漢方薬として知られる『大建中湯(だいけんちゅうとう)』は、便秘気味の人が服用すればお通じが良くなるし、下痢気味の人ならそれが治まる作用があります。

抗炎症作用を持つカンゾウ、腸の機能を高めるニンジン、腸の血流を良くするサンショウなどの4種類の生薬を含み、腸内細菌を介して腸炎を抑制するというメカニズムが解き明かされています(理化学研究所生命医科学研究センターの免疫学者である佐藤尚子博士らが行った研究)。
つまり、その人の体の中で足りないものを補い、あるいは多くなりすぎたものを抑える仕組みが漢方薬にはあるのでしょうね!。
漢方薬が「効きすぎる」可能性は低い
それでは漢方薬に“薬の効きすぎ”はないのだろうか?
バランスが崩れているものを元に戻すという仕組みで成り立っているのが東洋医学です。
数多くの検証結果を確認しても、薬を服用するときに期待する効果が出すぎて困るということはないだろうと考えています。
例えば睡眠薬を服用して翌朝も眠くて→というような期待する効果(ここでは眠気)が過剰になる可能性は低い。
ただし、望んでいない効果=副作用はありえます。
漢方薬のみではなく西洋薬を含めて処方する臨床経験が豊富であるため、読者に有益な「薬の選び方」を教えてくれると思ったからです。
“舌が白い”は胃腸機能低下のサイン…漢方の専門医が説く「自分でチェックできる」2つのポイントとは?
「今からおよそ25年前、2001年に医学部の医学教育モデル・コア・カリキュラムに『和漢薬を概説できる』と記載された」のです。
それ以降、薬学部、看護学部、歯学部でもカリキュラムの中で『漢方薬を勉強しましょう』という姿勢がとられるようになりました。
明治時代から始まった西洋医学中心の医学に足りない面がある、だから治療の中で漢方薬も使っていかなければいけないと、この20年で国が見直し始めたということです。
そしてやっとこの15年で漢方薬がどう効くのかが、わかってきました。
科学の進歩によって、漢方薬に使われているひとつひとつの薬草(生薬)の薬理作用が解明され、漢方薬を服用すると、どのように血液中に分解され、吸収され、効果が出るのかといった体内での代謝(漢方薬がどんな形に分解されて、どの遺伝子に作用するのか)が明らかになってきたのです。
逆に考えると、それまでは「漢方薬がどうして効くのか」がわからなかった。
だから東洋医学的な見立て、「証」に頼った処方が主流になり、「漢方薬はよくわからない」と敬遠される面もありました。
漢方薬の研究報告はものすごくたくさんありますが、中には眉唾(まゆつば)のようなデータも紛れていました。
しかし、ここ15年のデータは英語の論文になったものも多く、誰が読んでも納得できる研究報告が増えてきています。
薬理効果が証明されている漢方薬
だが最近わかるようになってきたからこそ、はるか前に医師になった人は漢方医学が科学的に証明されていることを知らない可能性もあり、また若い医師でも十分に漢方薬の薬理効果を勉強している人が少ないのが現状といいます。

どういう作用を持っていて、どのような病態で使うと、どう働くかを知らないから、適切に処方できない。
そのために実際の現場では漢方薬が効いたり効かなかったりという結果を招いてしまうことが少なくありません。漢方薬のすべてがわかっているわけではありません。
けれども現代医学で解明され、薬理効果が証明されている漢方薬を正しく使うだけでも、患者さんは理解しやすいし、早く良くなります。
漢方医学の薬理効果と病態生理(人が病気になったとき、異常を起こしている原因は何なのか)を理解し、漢方的な診断の治療を選択する、その裏付けとして西洋医学的診断を合わせてマッチすれば正しい形になる、と考えます。
診断、治療、処方の選択肢のひとつに、漢方医学があるイメージです。
今は「夏バテの期間」が長期化している
「病の予防的に補中益気湯を服用するのはどうか?」と聞いてみると、「保険診療では予防医学は認められていません。
補中益気湯を予防医療に処方することは禁忌です。やっちゃダメです」とばっさりです。

いつも市販の漢方薬を購入して服用しているので、「それなら市販薬では?」と再度質問すると、「市販薬の購入は個人の自由です。
ただし仮に副作用が起きても個人の責任ですよ」と厳しい答えです。
本来医学的に夏バテという基準はないので、病院で体の不調を訴えても、治療の対象にはなりません。しかし暑さによって体への負担が増した結果、さまざまな機能が低下した状態になっています。
確かに補中益気湯は別名“医王湯(いおうとう)”とも呼ばれ、医薬品の王様ともいわれました。それでも10人いたら10人に合うとは言えません。
やはり診断が必要で、誰でも補中益気湯を飲めば夏バテに効くというのはありえません。
夏が苦手で食が細くなるなら胃苓湯(いれいとう)、夏バテで元気がなくなるなら清暑益気湯(せいしょえっきとう)が良いといいます。
ちなみに健康保険適用の医療用漢方製剤は、現在148種類あります。
このうち「暑気あたり(夏の暑さのために体調を崩すこと)」に保険適応がある医療用医薬品は、胃苓湯、清暑益気湯のほか、四苓湯(しれいとう)、五苓散(ごれいさん)、柴苓湯(しれいとう)の5つです。
さらに過去と比較して夏バテの期間が長期化し、「ひとつの漢方薬ではとても対応できない」と強調されています。
治療の必要がある場合には、健康保険適用で漢方薬を処方しますが、最近は夏に補中益気湯を処方するケースが減りました。
年間約1万人の患者さんが受診し、いわゆる夏バテと思われる人に補中益気湯を処方したのは、10人に1人くらいの割合でしょうか。
コロナ禍を境に運動習慣がなくなる、飲み会など憂さ晴らしの機会も減るなど生活スタイルが大きく変化したのと、コロナ以外でも感染症が多発しています。
加えて夏の暑さが数カ月にわたって続くのですから、ひとつの漢方薬ですべてのシーンを支えるのは難しいのです。
舌を見れば消化管の機能がわかる
漢方薬を選ぶ前に、「早めに自分の調子の悪さを見つけて手を打つこと」です。
自分で体調を管理する2つのポイントを教えてくれました。まずは「舌」です。

口の入り口から肛門まで管になっていて、これを消化管といいます。
消化管の中にある臓器はそれに関連しますから、舌を見ることで消化管の機能がわかります。
子どもの頃、プールで唇が青紫になった人を見ませんでしたか?。血流が悪ければ青くなるのです。それは舌だって同じです。
舌の色が青紫に近ければ血流が悪い、すなわち胃腸の調子が悪いのです。
それでは、よくみられる“舌が白っぽい”は?
慢性的な胃炎があると免疫力が低下し、舌がコーティングされて(菌がついて)白くなります。
実際に胃カメラを行うと、胃の表面の粘膜の状態とほぼ一致するのです。胃腸の調子がさらに悪くなると、舌の表面の色が白から黄色、茶色から黒にもなっていきます。
一番いいのは、「ピンク色」。毎日自分の舌の色をチェックして、色が悪いなと感じたら、食事量を減らす、脂ものは避けて鍋物にするなど、胃腸を労るような食生活を心がけるといいそうです。
もうひとつのチェックポイントは「便」
『ブリストル・スケール分類』で、便の硬さを見ることで消化管の通過時間がわかります。3か4の普通便であれば、胃腸の働きが良く、腸内環境が良いといえるでしょう。
免疫力は腸が司りますから、病気になりにくい状態ですね。

一方でコロコロ便であれば、消化管の通過時間が長く、100時間とされています。運動量を増やしたり、食物繊維や適宜水分を摂取して排便を促すといいかもしれないです。
また夏でも湯船に浸かって体を温めることもお勧めといいます。
まとめると、舌と便のセルフチェックで不調の兆しを見つけ、まずは自分でケアをすることです。
それでも体調がすぐれないときには「医療機関を受診してほしい」です。
体調を崩したときはむしろいいチャンスで、何でも相談できるかかりつけ医を見つけるつもりで病院にかかってほしいんです。
いつも患者さんに、『3人の医師に診てもらいなさい』と勧めるんですよ。
一人はすぐ診てくれ、風邪に対処できる薬などをぱっと処方してくれる近所の医師、もう一人は入院施設がある病院に勤める医師。そうすれば休日などで緊急事態が起きた際にも、対応してくれます。
そして3人目は、総合的に診られる医師。3人いれば大丈夫ですよ。
一人だけでは医師の主観による治療が進められたり、肝心なときに診てもらえないなど「“困った事態”が起きる可能性が高いのではないか」と話します。
夏風邪は「48時間以内」に服用
かかりつけ医を探しながら、同時に「自分に合う薬」を見つけることも大切といいます。
一例として、風邪の漢方薬を挙げてくれました。
体調を崩す、風邪をひくときにはのどからくるか、鼻からくるか。自分がどのパターンで初期症状が出るか確認してください。
一般的な例として、鼻から風邪が始まる症状の人の場合は小青竜湯(しょうせいりゅうとう)を、のどから始まるときには麻黄附子細辛湯を処方します。
どちらも症状が出てから48時間以内に服用すること。その知識をもとに医師に処方してもらうのがベストですが、市販薬で試してみてもいいでしょう。
薬が合えば、次回の不調時もそれを使えますね。
48時間以内というのは、ウイルスが増殖する前に漢方薬という援軍を送り込めば、自身の免疫力を高めて対抗できるからです。
漢方薬の場合、こうした一時的な服用よりは、“体質改善”という理由のもとに何年も何十年も服用している人が少なくないです。
薬は調子を崩したときに飲むものであって、「ずっと服用」には否定的です。
どんな薬でもいい作用があれば、必ずマイナスの作用があるからです。先日も『漢方薬を2年間服用したけれど治らない』という患者さんが来局しました。
2年も飲んで治らないのは、適切な処方ができていないからでしょう。
実際に服用している薬を見直せば、あっという間に不調が改善する患者さんが多いです。
西洋薬はピンポイントで効く。そして漢方薬はピンポイントの隙間を埋めるように存在します。
癌(がん)であればつらい症状を和らげられるし、認知症にも周辺症状に効果があります。
パーキンソン病患者に六君子湯(りっくんしとう)という漢方薬を勧め、回復へ導いたことがあるといいます。
ドーパミンと呼ばれる神経細胞が減少するパーキンソン病は、筋肉がこわばり手足が動かしにくくなって歩きにくくなったり、手が震えたりという症状が出ますが、人によっては消化機能の働きも悪くなり、食欲が低下します。
『どんどん痩せ細って心配です。何か良い薬はないでしょうか』と患者さんのご家族から相談され、六君子湯を提案しました。
「治す力を上げる」という意識で選びたい
(『東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム』)によると、六君子湯には抗炎症作用を持つソウジュツや胃液の分泌を促進するチンピなど8種類の生薬が含まれ、食欲不振に効果的です。
臨床試験では、単なる食欲不振だけでなくさまざまな病気に付随する胃の不調の改善も報告されているといいます。
このパーキンソン病の患者さんも服用して数週間後、『もりもり食べ始めました』とご家族から報告がありました。

また夏に起きやすい「就寝中のこむらがえり」にも芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)という漢方薬が確実に効きます。
夏は冷房など急激な温度変化で筋肉が収縮したり、発汗や脱水によって「こむらがえり」が起きやすくなります。芍薬甘草湯はスピーディに効きますよ!。
ランダム化比較試験(※臨床試験に参加する対象者をランダムに分けて、評価したい治療法と別の治療法を行って比較する試験。
これで有効性が示されれば「効く」といえる)で、芍薬甘草湯を服用すると、こむらがえりの頻度が減少したことが確認されています。
頻繁にこむらがえりを起こす患者さんには『枕元にペットボトルの水と芍薬甘草湯を置いておいて』と話します。
「不調の兆し」は自分で見つけましょう。そして身体が本来の動きを取り戻せるよう、「治す力を上げる」という意識で漢方薬を選びたいですね!。
東洋医学とは?
東洋医学は古代中国文明に発祥し、東アジア一帯に広がり、各地域で受け継がれ発展し、19世紀に近代医学が導入されるまで、東アジア各国の国民の医療を担ってきた医学です。

現代でも日本、中国、韓国などで伝統医学として尊重され、医療に貢献しています。
また、近年では世界各地でも受け入れられ、現代医学を補完する代替医学の代表として期待されています。
世界の伝統医学や代替医学の中でも、東洋医学は理論体系が最も整い、治療手段も豊富で、実用性の高いのが特徴です。
現代医学では治療が困難な難病や生活習慣病に有効なこともあり、世界各地の医療に取り込まれるようになりました。
五臓六腑が協調的に働き、それを経絡システムが連絡し、気・血・津液が流動するという身体観、身体機能が衰えたり、病邪が働きかけて健康を損なうという病理認識、病理状態を認識する診断技術、治療法を決定する弁証論治という診断治療システムを系統的に解説することを心がけました。

東洋医学の治療法
治療法はいろいろ
東洋医学と聞いて、だれでもすぐに思い浮かべるのは、鍼や灸、あるいは、漢方薬です。
そのほかにも、按摩、指圧、気功、薬勝(食養生〕といったものがあります。
鍼と灸.指圧と按摩
鐵は、専用の鐵を皮膚表面から刺すことで治療します。
灸は、皮膚の上で「もぐさ」を燃やすことで治療します。
どちらも体の外側から刺激をあたえて、病気を治す方法です。
「鐵灸」とひとまとめに呼ばれることも多いです。
また、指圧や按摩は、皮肩を指で押したり、さすったりすることで、体に刺激をあたえ、病気を治していきます。
漢方薬
漢方薬の特徴は、植物、動物、鉱物など自然の素材でつくられていることです。
煎じて飲む方法がもっとも多く用いられています。
身体の内側から働きかけて病気を治すためです。
そのほかに、塗布する(塗り薬にして塗る)方法が用いられる場合もあります。
気功と薬膳
気功には、「外気功」と「養生気功」があります。
外気功は、気功の医師が「気」を送るなどして行う泊療法です。
養止気功(太極拳もその一種)や薬膳は、治療法というよりも、健康維持や病気の予防のために用いられることが多いです。
養生気功は、体を動かし、呼吸をコントロールすることで、病気を害せつけない身体をつくっていきます。
薬膳は、食事を調整することで、病気を寄せつけない身体をつくっていくのが目的です。
※気とは人体を構成し生命を保つための基礎的なエネルギーです。
太極拳とは?
太極拳(たいきょくけん)の始まりは動物のまね?
中国の歴史書である『三国志』や『後漢書』には、曹操(そうそう)などの武将に加え、当時の名医たちも登場しますよ。

そのなかの一人に、華陀(かだ)という、後漢(25~220年)の末期に活躍したとされる伝説的な名医がいます。
外科を得意とし、麻酔薬を使って開腹手術をしたともいわれる人物です。
この華陀が考案したとされ、現在にまで伝わるのが、「五禽戯(ごきんぎ)」と呼ばれる「導引術(どういんじゅつ)」です。
導引術とは、手足や関節を動かして、「気血」のめぐりをよくするための健康体操で、五禽戯は、虎、鹿、熊、猿、鳥の5つの動物の動きをまねるというものです。
呼吸法を意識しながら、虎が伸びをするような姿勢で身体を伸ばしたり、熊が後ろ足で立ち上がって歩くのをまねて腰をまわす運動をしたり、単純な動作でありながら、体全体を動かすことができるように考えられいます。
五禽戯は、日本でも愛好家の多い「太極拳」の元ともいわれています。
たとえば、太極拳の入門編として広く普及している「簡化(かんか)24式太極拳」の中には、「白鶴亮翅(ぱいふぅりゃんちい)」という、白鶴が翼を広げる姿を模した動作が見られます。
背筋を伸ばして少し腰を落とし、手を翼のように広げる、優雅で美しい動作ですね!。
動物のまねというと、一見子どものお遊戯のようですが、立派な健康法のひとつなのです。
EBMと東洋医学
近年、医学界ではEBMということが盛んにいわれています。
EBMとは、Evidence-based Medicineの略で、日本語ではふつう「根拠に基づく医療」と訳されます。
ここでいう「根拠」とは、ある治療法や検査法などが有効であるという情報のことです。
つまり、EBMは、現在利用可能なもっとも信頼できる情報をふまえて、患者にとって最善の治療を行うという、医療現場における行動指針をあらわしています。
EBMは、次の5つのステップを経て実践されます。
①問題の明確化
②治療法や薬の効果についてのさまざまな情報を調べる
③批判的に検証する
④そのうえで患者に最善の治療を選択する
⑤効果の検証。
一方、東洋医学で現在行われている治療法は、すべて長年にわたる臨床の経験によって効果が認められたものです。
膨大な数の情報収集と批判的検証の結果、生き残ったものばかりです。
そして実際の治療においては、同じ症状であっても、症状を引き起こしている原因をさぐって、一人ひとりの患者に合った治療法が決められます。
つまり、EBMを実践するときの5つのステップは、東洋医学が、その2000年以上の歴史の中で実践してきたことそのものなのです。
とかく現代医学は進んでいて東洋医学は古くさいと思われがちですが、EBMという点では、実は、東洋医学は現代医学のはるかに先を行っているのです。